
Interview- インタビュー
フレンチの巨匠村上シェフが語る。山形食材とフレンチの融合
山形県は、豊かな自然と四季折々の恵みに満ちた美食の宝庫です。その山形の食材に魅了され、フレンチという洗練された料理の世界でその魅力を最大限に引き出しているのが、フレンチレストラン「ラ・プランセス・デ・モンターニュ」のオーナーシェフ、村上氏です。
今回は、山形市内に店を構え、地元の人々はもちろん、県外からも多くの食通が訪れる村上シェフに、山形食材への熱い想い、そしてフレンチと山形の融合についてお話を伺いました。
衝撃を受けた、山形の「土」の力

「初めて山形の野菜を食べた時、その力強さに本当に驚きました。特に印象的だったのが、ある農家さんからいただいた庄内地方の在来品種のキュウリです。スーパーで売られているものとは全く違う、青臭さの中にしっかりとした甘みと香りが感じられました。それは、肥沃な土地と、そこに代々受け継がれてきた栽培方法が育む、まさに**『土の味』**でした。」
村上シェフは、山形の食材と出会った時のことを熱く語ります。それまで都内の有名レストランで腕を振るっていた村上シェフにとって、山形の食材が持つ力強さは、まさに衝撃だったと言います。
「フレンチのベースは、素材の味を最大限に引き出すことです。しかし、山形の食材は、そのままでも主役を張れるほどの存在感がある。だからこそ、料理人はその**『個性を活かす』**ことに徹しなければならない。余計な手を加えすぎず、素材が持つポテンシャルをいかに引き出すか。その探求こそが、私の料理の原点となりました。」
伝統野菜から旬の果物まで。フレンチに息吹く山形の恵み

村上シェフのメニューには、山形の豊かな食材が惜しみなく使われています。春には「うるい」や「こごみ」といった山菜を使い、バターとコンソメでシンプルに仕上げた一皿。夏には、朝採れのだだちゃ豆を冷たいヴィシソワーズに仕立て、香ばしいフォアグラと合わせます。
「だだちゃ豆の濃厚な甘みと香りは、フォアグラの重厚な風味と見事に調和します。そして秋には、きのこ王国山形ならではの、様々な種類のきのこを使ったアシェット(一皿)を。香り高い舞茸と秘伝豆を合わせ、トリュフの香りを加えることで、深みのある一皿に仕上げます。」
そして、山形といえば冬。雪の下で甘みを増す伝統野菜や、冬が旬の寒鱈を使った料理がテーブルを彩ります。
「雪の下でじっくりと熟成された雪中キャベツは、その甘みとみずみずしさが格別です。軽くソテーするだけで、フレンチの付け合わせとして最高の存在感を発揮します。寒鱈の白子も、フレンチの調理法で全く新しい魅力が引き出せると信じています。」
さらに、山形は果物も忘れてはなりません。春のイチゴ、夏のさくらんぼ、秋のラ・フランス。村上シェフは、これらの果物をデザートだけでなく、メイン料理のソースにも活用します。
「さくらんぼの酸味と甘みは、鴨肉のローストと相性が抜群です。ラ・フランスの芳醇な香りは、ジビエ料理のソースに深みを与えてくれます。山形の果物は、主役にも脇役にもなれる、非常に懐の深い存在です。」
訪れる人々を魅了する「山形の物語」

村上シェフが最も大切にしているのは、「料理を通じて山形の**『物語』**を伝えること」だと言います。
「お客様に料理を出す際、その食材がどこで、誰によって、どのように育てられたのかを伝えるようにしています。例えば、このお肉は、月山の麓で育った豚で、餌には地元の米を使っていること。この野菜は、親子三代にわたって土作りからこだわっている農家さんのものだということ。そうすることで、お客様は単に美味しい料理を食べているだけでなく、山形の自然や人々の暮らしに触れることができるのです。」
村上シェフの料理は、まさに山形のDMOを体現していると言えるでしょう。一皿の料理が、山形の生産者と消費者を繋ぎ、地域全体を盛り上げる役割を担っています。
村上シェフが語る、今後の展望

「私の目標は、山形の食材の魅力をさらに多くの人に知ってもらうことです。そのためには、新しい食材との出会いを求め、生産者のもとへ足を運ぶことをこれからも続けていきたい。そして、その食材の良さを引き出すための、新しいフレンチの調理法も常に探求していきたいと思っています。山形には、まだまだ眠っている魅力がたくさんあります。フレンチというフィルターを通して、その魅力を世界に発信していきたいですね。」
村上シェフの瞳は、未来への熱い想いで輝いていました。山形という土地で、フレンチという技法が織りなす新たな食の物語は、これからも多くの人々を魅了し続けることでしょう。
山形のフレンチの世界に足を踏み入れてみたくなりましたか?村上シェフのような情熱を持った料理人たちが、山形にはたくさんいます。
次回の山形旅行では、あなただけの食の物語を探してみてはいかがでしょうか。